身内にも友達にも、相手にされなくなった。
借金をしても全く返していないのだから、相手にされないのは自業自得だ。
普通のところでは、お金は借りられない、なぜなら、限度額一杯に借りているから。
普通のところではないところで、お金を借りることに当初は抵抗があったのだが、人間はなんにだって慣れる動物。
普通のところではないところでお金を借りることにも、慣れてしまった。
「何か用?」、私に声を掛けて来たのは、顔は笑っているのだが目付きの悪い男。
私、「お金を借りられますか?」
すると、目付きの悪い男は、吸っていたタバコの火を消した。
暫くすると
男、「かなりつまんでるな、ブラックリストに入ってると、どこも貸してくれないだろ?」
このシチュエーションでどうリアクションをすれば良いのだろう?
「はい」と返事してしまうと、ブラックリストに入っていることを自ら肯定することになり、お金を借りられなくなるのではないだろうか。
男、「10万で良いか?」
私、「ありがとうございます」
とは言ったものの、ブラックリストに入っている私にとって、10万円は焼け石に水。
男、「お金は何に使うの?ギャンブル?女か?」
私は首を横に振り苦笑い、なぜなら、借りた10万円は、そのまま他の債権者に返済するから。
こんなことは、男は百も承知。
店を出た私は、次にお金を貸してくれるところを探しに行った。
ブラックリストに入った人間は、元金は返さず(正しくは返せず)、利息分だけ返すのが一般的。
1週間後、10万円を貸してくれた目付きの悪い男に利息分だけ返しに行くと、
目付きの悪い男、「このあと予定は?」
私、「特にありません」
ブラックリストに入ってからは、金策してかしていない。
男、「元金を少しでも返してかないと大変だぞ」
こんなこと言われなくても、身に沁みて分かっている。
男、「俺の下で働くか?」
私、「借金まみれですよ」
男、「そんなの知ってるよ」
私、「何をするんですか?」
男、「ウェストは何センチ?」
私、「〇〇センチもないと思います」
ブラックリストに入ってからは、まともに食事をしていないためメッチャ痩せた。
男、「俺のスーツを着てみろ」
目付きの悪い男のスーツを着てみると、
男、「似合うじゃねえか」
鏡に映る私も、目付きが悪かった。
目付きの悪い男の下で、午前中は金貸しのビラ配りをした。
ビラ配りの合間に金策をしていると、バレて焼きを入れられた。
男の下で働くようになっても借金は減らないが、メシは食わせてもらえるため徐々に体重は戻った。
体重が戻ると、
目付きの悪い男、「貫禄が出て来たな(笑)」
目付きの悪い男の紹介で、クラブで黒服として働くようになった。
クラブに来たのは何年ぶりだろう?
黒服として働く以外に、一番人気の女性の送り迎えをするドライバーもやらせてもらえるようになると、チップを頂けるようになった。
女性と車で二人っきりになるのは、何年ぶりだろう?
クラブでは、期限が切れたボトルを貰えるため、店で飲めば何万も取られる酒をタダ飲みできる。
一番人気の女性を家に送る際
女性、「借金は私が建て替えてあげようか?」
私、「本当ですか?」
借金が一本化出来れば返済が楽になる。
いつもは、マンションの駐車場で別れるのだが
女性、「部屋に寄ってかない?」
クラブで一番人気の女性と黒服の私が関係を持つということは、店の商品に手を出すのと同じことで、店にバレると大変なことになる。
しかし、女性と関係を持てば、借金が一本化でき楽になる。
どうする、俺?
女の部屋へ行くと、服を脱がされた。
シャワーを浴びていないのに、女は口でしてくれた。
ブラックリストに入ってからは、オ◯ニーばかりで女性とはエッチをしてなかったため、女に口でしてもらうと
私、「あっイク」
すると聞こえたのが、「おい、いつまで寝てるんだ、早く起きろ」
目を覚ますと、目付きの悪い男が私のことを見ていた。
男、「お前、大丈夫か?」
私は夢を見ていた。
実際の私は、目付きの悪い男の知り合いが経営する会社で肉体労働を10年間やらされた、しかも、休みは月に1度あるかないか。
しかし、そのお陰で借金は無くなった。
目付きの悪い男、「これから、どうするんだ?」
借金が無くなっても、身内にも友達にも相手にされなくなった私に帰るところはなく、借金が無くなっても休みが月に1度あるかないかの肉体労働を今も続けている。
休みがあると、また、ギャンブルで借金をしてしまう。
目付きの悪い男、「メシを食いに行くか?」
私、「はい」
借金完済の御礼に食事代を私が支払おうとすると、目付きの悪い男の目尻は一瞬下がったが、メッチャ叱られた。